干潟にたくさんの生きものが集まるのはなぜか。
干潟には、川が運んできた動植物の死がいやフン、干潟で育った藻類やヨシの落ち葉などの有機物が溜まっている。有機物はゴカイなどが食べてフンになるなどさらに細かくされた後、微生物によって分解され無機物となり、植物の生長に利用される。干潟は、水に浸かったり空気にさらされたりするので水も酸素も十分で、浅瀬で光もたっぷり当たるため、植物プランクトンの光合成が活発に進む。豊かな栄養分と光合成によって植物プランクトンが大量に発生する。このプランクトンや有機物を、アサリなどの貝類やカニ類などが食べる。こうした栄養分がたくさんある干潟の水中は、水深が浅く大きな魚が入ってこられないため、多くの稚魚が育つ場となっている。このように、干潟でたくさんの生きものが砂や泥の中から栄養を吸収することは、水質をきれいにすること(浄化作用)にもつながっている。
 春や秋の干潟では、チョコチョコと走り回り、泥をくちばしでつついていてカニや貝類、ゴカイなどを食べている鳥の姿を見ることができる。シギ類やカモ類などの水鳥は、干潟にいる小さな生きものや水中の魚、水草が大好物である。ヨシ原などの草地では昆虫類もたくさんおり、多くの野鳥にとって干潟のまわりは絶好のえさ場であり、長い旅の途中の休憩場所となっている。えさとなる生きものを捕まえやすいように、干潟に集まる野鳥のくちばしの形や脚の形・長さなど身体も様々な特徴を持っている。
  一方、カニなどの小さな生きものは鳥たちに食べられないように、砂や泥の中に潜ったり、ヨシ原で身を隠したりというように身を隠さなければならない。小さな生きものにとっては、干潟のヨシ原は外敵の目を避けたり強い水の流れから身を守ることもできる場所である。また、小さな鳥が集まると、その鳥をねらってタカやミミズクなどの大型の鳥(猛禽類[もうきんるい])もやってくる。このように、干潟とそのまわりは、様々な種類の生きものが集まる場所になっている。